ロゴタイプ「栄光は再び」

その仔馬は、まだ雪の残る北海道・社台ファームで生を受けた。父はローエングリン、母はステレオタイプ。生まれたときから人懐こい性格と聡明な眼差しを持ち、厩舎の誰もが「何かをやってくれるかもしれない」と密かに感じていた。名は、ロゴタイプ。胸を張って走るその姿に、やがて数万人の視線が注がれることになるとは、まだ誰も知らなかった。

 二歳の夏、ロゴタイプは函館競馬場でデビューを飾った。パドックでの落ち着き、ゲートでの集中、そしてゴールまでの鋭い脚――初戦を勝ち上がるその様子は、若さの中に潜む覇気を感じさせた。そして秋、朝日杯フューチュリティステークス。前評判はコディーノに集中し、ロゴタイプは脇役に甘んじていた。だが、彼は違った。外枠から先団につけ、直線ではコディーノと死闘を演じた。最後に鼻先ひとつ前に出たその瞬間、スタンドに歓声が爆発した。

 三歳春、彼の存在は中央競馬の中心にあった。スプリングステークスを完勝し、皐月賞ではエピファネイアらの猛追を抑えて堂々の二冠。その黒鹿毛の馬体は、堂々たる王者の風格を纏っていた。しかし、栄光の時間は永遠ではなかった。ダービーでは距離に苦しみ、札幌記念では脚元に不安を残す。やがて訪れる沈黙の季節――勝てない日々が続いた。

 「終わったのかもしれない」

 そんな囁きが、スタンドにも、メディアにも、そして厩舎にも忍び込んだ。しかし、ロゴタイプは走ることをやめなかった。黙々と調教をこなし、気配を消すようにゲートへ向かう。誰にも知られず、誰にも注目されず、それでも彼は走り続けていた。

 転機は、2016年、梅雨の気配漂う東京競馬場、安田記念だった。誰もが伏兵と見なした彼が、逃げた。レース前、「逃げるつもりはなかった」と語った陣営。だがゲートが開いた瞬間、ロゴタイプはすべてを置き去りにした。軽快に飛ばし、直線を迎えてもその脚は止まらない。迫るモーリスを封じ、ゴール板を真っ先に駆け抜けた瞬間、四年ぶりのGⅠ制覇が彼を、そして彼を信じ続けたすべての人々を、歓喜の渦に巻き込んだ。

 「やっぱり、この馬は本物だった」

 ロゴタイプはその後も一線で走り続け、2017年、静かにターフを去った。引退後は種牡馬として新たなステージへ。彼の走りを、血を、その心を受け継ぐ者たちが、再び競馬場を駆ける日を、人々は心待ちにしている。

 ロゴタイプ。黒鹿毛の小さな英雄。栄光と挫折、誇りと再生――そのすべてをその背に背負い、彼は今日も夢の続きを見る。

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