芝のターフに、ひときわ美しい軌跡を刻んだ牝馬がいた。
その名は、アーモンドアイ。
2015年3月10日、北海道のノーザンファームで生を受けたこの鹿毛の牝馬は、やがて日本競馬史に燦然と輝く存在となる。父ロードカナロア、母フサイチパンドラ、華麗なる血統に生まれた彼女には、初めから“何か”が宿っていた。
デビューからの衝撃──風のように駆け抜ける才能
2017年の新馬戦では惜しくも2着に敗れたものの、続く未勝利戦で初勝利を挙げると、そこから女王への階段を一気に駆け上がった。2018年、牝馬三冠戦線に参戦。桜花賞、オークス、そして秋華賞。一度も後ろを振り返ることなく、全てを勝利で彩った。
牝馬三冠を無敗で制したその走りは、まさに異次元。瞬発力、持久力、そして勝負根性。すべてを兼ね備えたアーモンドアイは、既に“怪物”と呼ばれるようになっていた。
世界を見据えた走り──ジャパンCの衝撃
そして、彼女の名が世界に轟いたのは2018年のジャパンカップ。舞台は東京競馬場。2分20秒6──それは芝2400メートルの世界レコード。風を切るようなその走りに、誰もが息を呑んだ。
それは日本競馬が世界に誇れる、究極の“完成形”だった。
9冠という勲章──偉業の向こう側へ
その後も、ドバイターフ制覇や天皇賞・秋(連覇)、そして2020年には史上最多となるGI通算9勝を達成。最終レースとなったジャパンCでは、無敗三冠馬コントレイル、無敗三冠牝馬デアリングタクトという新世代の怪物たちを相手に堂々の勝利。
ラストランを美しく締めくくったその姿に、ターフは惜しみない拍手に包まれた。
心に刻まれた“眼差し”
その名のとおり、“アーモンドのような美しい瞳”を持つ彼女は、走りだけでなく、その存在そのものが多くのファンに愛された。
気品ある立ち姿。闘志を宿す眼差し。そして何より、決して諦めない心。
アーモンドアイは、「強い馬」が「美しい馬」でもあることを、私たちに教えてくれた。
未来へ──伝説は受け継がれる
2020年に現役を引退し、繁殖牝馬として新たな道を歩み始めたアーモンドアイ。
次なる夢は、母としてもう一度「最強」を世に送り出すこと。
彼女の血を受け継ぐ新たなスターが、再びターフに風を巻き起こす日は、きっとそう遠くない。
私たちは忘れない。
あの日、あの時、青空の下で見た“女王の走り”を。
そして、これからも語り継ぐだろう。
「アーモンドアイこそが、日本競馬の誇りだった」と。
レビュー1
歴史的名牝
とにかくカッコよくて強かった
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