ダイワスカーレット―緋色の栄光―

霧深い早春の社台ファームに、一頭の栗毛の牝馬が生まれた。
その小さな命に与えられた名は——ダイワスカーレット

生まれながらにして選ばれし血統。父は無敗の皐月賞馬・アグネスタキオン、母は名牝スカーレットブーケ。期待と宿命を背負い、彼女は風のように駆け抜ける運命にあった。

デビュー戦は、2006年京都競馬場。まだ幼さ残るその姿とは裏腹に、ダッシュ力はまるで稲妻のようだった。彼女は余裕をもって初戦を勝利で飾り、2戦目の中京2歳Sも快勝する。

だが栄光の道は、平坦ではない。
翌2007年、重賞シンザン記念では牡馬に初めて土をつけられる。彼女にとって初めての敗北。それでも彼女は怯まなかった。むしろそれは、闘志に火を灯したのだった。

そして訪れた桜花賞。ライバルは、後に伝説となる牝馬・ウオッカ
2頭の名牝が火花を散らした直線。ダイワスカーレットはその勝負根性を爆発させ、わずかの差で先着。ターフに新たな女王が誕生した。

秋華賞、エリザベス女王杯と続けてGⅠを制し、三冠に匹敵する実績を築く。
華やかさと力強さ、正確無比な先行力。その姿に、人々は「ミス・パーフェクト」と呼び始めた。

だが、その頂点の座を巡り、もう一度、宿命の相手が立ちはだかる。
2008年の天皇賞(秋)、東京芝2000メートル。
ウオッカとの一騎打ちは、競馬史に残る壮絶な死闘となった。
最後の直線、どちらが勝ったかわからぬまま二頭はゴールへ飛び込んだ。結果は、ハナ差——ウオッカ。だが誰もが、ダイワスカーレットの闘志と誇り高い姿に胸を打たれた。

その年のラスト、有馬記念。
出走馬の中に、もはや敵はいなかった。
ダイワスカーレットは先手を取り、自分のペースを貫いた。
最後の直線、後続を寄せ付けず、ゴール板を駆け抜ける。
牝馬として37年ぶりの有馬記念制覇——。
彼女は自らの手で、歴史を塗り替えたのだった。

12戦8勝。連対率100%。
一度も崩れなかった誇り高きキャリアは、競馬史に刻まれた伝説である。

引退後、彼女は繁殖牝馬として第二の人生を歩む。
その血は、未来へと受け継がれていく。
だが、ファンの記憶の中で、彼女はいまだに走り続けている。
栗毛が陽光を浴びて輝く、あの勇姿を忘れることはない。

緋色の風が吹くたびに、人々は思い出す。
あの、ターフを完璧に駆け抜けた牝馬の名を——
ダイワスカーレット

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