グランアレグリア―風より速く、光より強く ―

春の匂いがまだ土に残る北海道・安平町。凛とした空気の中、ひとつの命がこの世に誕生した。
その鹿毛の牝馬は、誰よりも早く、そして誰よりも強くなる運命を背負っていた。
名は「グランアレグリア」——スペイン語で“大歓声”を意味するその名に、誰もがまだ、未来の栄光を知らなかった。

桜の女王

2歳秋、東京競馬場の芝で初めてその脚が火を吹いた。
軽やかに、そして迷いなく風を切り裂く。
サウジアラビアロイヤルカップで見せた走りは、少女の初陣としてはあまりにも鮮烈だった。

そして迎えた2019年、桜咲く阪神。
中111日のブランクなど、彼女にとってはただの演出に過ぎなかった。
直線、すべてを置き去りにするかのような末脚——2着に2馬身半差をつけて駆け抜けたその瞬間、スタンドから放たれた大歓声が、彼女の名と完璧に重なった。

「これが、グランアレグリアか」

誰もが、そう呟いた。

女王の影を超えて

翌年、彼女はさらなる試練に立ち向かう。
高松宮記念で見せた悔しさを胸に、挑んだ安田記念。
目の前にいたのは、最強牝馬アーモンドアイ。歴史を背負う女王だった。

だが、直線で見せた彼女の加速は、まるで“信念”そのものだった。
女王の影を切り裂き、ゴール板を最初に駆け抜けたその姿は、「新たな女王」の誕生を告げていた。

秋、スプリンターズステークス、マイルCS。
短距離王国にその名を刻み、王道を突き進むその背には、どこか涼しげな風が常に纏っていた。

そして伝説へ

2021年、最後の年。
彼女はマイルという舞台で、ついに“完全制覇”を成し遂げる。
ヴィクトリアマイルでの圧勝、天皇賞秋での意地、そして引退レース、マイルチャンピオンシップでの連覇。

すべてが、静かで、鮮やかで、完璧だった。
レースを終えて帰ってきた彼女の瞳には、疲れではなく、満ち足りた光が宿っていた。
「もう、すべてを出し切ったよ」
——そう語っているかのようだった。

血を継ぐ者たちへ

彼女は今、母となった。
新たな命が、その血を受け継ぎ、この世に立つ。
芝を駆ける鼓動が、いつかまた「グランアレグリア」という名の歓声を甦らせるだろう。

だが、彼女の伝説は記録の中にだけあるのではない。
競馬場の風の中に、歓声の余韻の中に、そして、ひとりの牝馬が刻んだ「誇り」の軌跡として——。

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